@article{oai:nsu.repo.nii.ac.jp:02000040, author = {内橋 賢悟}, issue = {64}, journal = {新潟産業大学経済学部紀要}, month = {Jan}, note = {論文(Article), 一般に新古典派経済学の成長モデルにおいて,市場参入者は外生的に付与された選好に基づ いて利己的に効用最大化を図ると認識される。いわゆる「市場インセンティブ」が市場参入者 の利己的な効用最大化を図るため,このような現象が生じるのである。ただし市場を操作する 主体は,市場競争を通じて達成される効用最大化を目的として掲げている。ゆえに合理性・効 率性の達成を求めながらも,同時に民主的な市場操作主体として彼らが市場参入していること を軽視してはならない。さらに市場を構成する一員として商品(財・サービス)供給に従事す る彼らは,「制度」が善き市民に取って代わる優れた政府の必要条件であることも認識している。 ゆえに制度自らが価格や数量の調整を図る道徳として機能し,呼応して市場による再分配機能 の修正に従事していることを,我々は再認識する必要がある。 このように市場において制度の存在が不可欠とされるのであれば,新古典派経済学の経済モ デルにおいても,非合理性的な市場取引が行われていることになる。米国の指導的ラディカル 派経済学者であるサミュエル・ボウルズ(Bowles,S)は,自著『制度と進化のミクロ経済学』(塩 沢由典、磯谷明徳、植村博恭訳 NTT出版 2013年)において,ミクロ経済理論を駆使して人 間行動と制度が相互作用によって如何に進化を遂げてきたかを明らかにする。ボウルズは,こ のような状況を「不完備契約市場」と呼び,財・サービスと貨幣との交換の場(市場)において, 供給主体(市場における権力主体)が権力に基づかない「市場による公平な再分配」を歪曲化 させている現状を指摘する。ゆえに市場の供給主体が自らの権力を通じて(「公平な再分配」 を展開する)市場を操作する非合理性がもたらされていることを軽視してはならない。すなわ ち市場とは,新古典派経済学の成長モデルを通じて市場主導の内生的・持続的均衡が相互作用 を伴いながら機能するに至る場であることを我々は認識する必要がある。 さらに我々が軽視してはならない現象として,このような「契約の不完備性」は内生的・持 続的均衡を通じて,やがて市場全般において「抗争交換」の現象が生じることが挙げられる。 このような状況であるがゆえに,社会的利益行動を通じて利己心を活用する政策主体へと権力 を集約させながら生じる同交換が,「制度」による市場の公平な再分配に貢献・寄与している事 実を軽視してはならない。「制度」自らが頑健性を通じて市場の競争性を抑え込んでいるため, このように市場自らが非合理的な現象を生み出しているためである。しかも市場操作主体が権 力を伴って達成される以上,「制度」が権力主体の市場コントロールせざるを得ない現状をも軽 視すべきではない。 一般に,市場における経済行動は財・サービスと貨幣との「交換」を通じて達成される。と ころが,既述した「抗争交換」が「契約の不完備性」をもたらすという事実ゆえに,市場が公平 な再分配機能を備えているわけではないことが理解できよう。ゆえに市場機能の競争優位性とは, 供給主体主導の「交換」を通じて不都合な諸要素を排除する傾向がある。この市場の特異性に より,たとえ「公平な再分配」のため自らが秩序を保つように用いられたとしても,「制度」は 市場参入者を取り巻く環境(法・ルール)としての一翼を担わなければならない。さらに「制度」 が果たすべき役割とは,このように公平性を前提とする市場の交換過程にとどまるものではなく, それを取り巻く様々な外的要因をも含んでいる。すなわち行動規範・慣行・自己に課する行為 コードなどインフォーマルな慣習の公平性をも含む概念として,「制度」は「市場の公平な再分 配」を貢献している事実を我々は認識しなくてはならない。 さて,このような市場の「公平な再分配」に貢献・寄与する「制度」は,一国においてとどま るものではなく,国境を越えて「移植」される場合が数多く存在する。では「制度」が一国か ら他国へと「移植」される場合,果たして如何なる現象がもたらされるのであろうか。たとえ ば「制度」それ自らが保持する特異性ゆえに,「移植移植」を通じて「移植」主体国の政策意図 と「移植」対象国の現実的状況とが乖離するという「意図せざる結果」の現象が予想されよう。 ゆえに「移植」主体国が交換を通じて「移植」対象国の市場均衡を図ろうと試みたとしても, この「意図せざる結果」によって,「移植」対象国において不完備契約市場が成立することは容 易に予想にされよう。 一般に市場の存在意義とは,ミクロ経済理論と経済行動との相互作用を通じて市場参入者が 経済行動に従事している点に求められる。ところが,このように一国の「制度」を他国に「移植」 するような場合,「移植」対象国において生じる現象は,この「意図せざる結果」によりミクロ 経済理論と経済行動との相互作用とは無関係に生じているのである。このように「移植」対象 国において「契約の不完備性」が生じており,結果として市場に非合理性が生じているとの認 識を導き出すことが可能になろう。 既述した契約の不完備性の実態について,本稿は日本型経済システムに多大なる影響を及ぼ した「1940年体制」を通じて明らかにすることにしたい。同体制は包括的な統制経済の展開 を前提としており,封建的な経済システムを通じて市場による公平な再分配を妨げるように作 用し,なおかつ契約の不完備性を生み出す「意図せざる結果」をもたらしたという歴史的経緯 が認められるためである。, application/pdf}, pages = {11--41}, title = {「1940年体制」にみる不完備契約の展開 ―市場ベース型資本主義「移植」挫折に伴う日本型経済システムの成立過程―}, year = {2024} }